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遠い記憶

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 注)純文学的ラヴシーン有りの短編です。
   苦手な方はご注意くださいね。 
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――198X年、9月某日。

 国際サマルカンド病院の屋上、通路に囲まれた中庭に、ふたりはいた。
 弓子はまだ強い午後の日差しと、秋の気配を含み始めた風を頬に感じている。

 宇宙でのセトとの死闘の後、満身創痍の中島と盲目の弓子はフィード教授の懸命な努力により8月末からこの病院に収容され、ふたりはアメリカ大使館の庇護の元、身元を隠し、ひっそりと暮らしていた。
 入院から幾日かが過ぎたこの頃には連日の検査や診察も一段落し、今は幾度かの手術にも回復を見せない弓子の目の定期的な診察が残るのみで、ふたりは表面上は穏やかと形容できるような、ささやかな日々を得ていたのだった。


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