【音楽】春の祭典

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「これ、なんていう曲だっけ?」
「春の祭典」
「ストラヴィンスキーね。クラシックが好きだなんて、知らなかったわ」
「演奏してるヒューバート・ローズはジャズ・ミュージシャンだよ」
                                                       (原典3巻P36、愛蔵版P329)

 


中島が国際サマルカンド病院で蘊蓄を語りながら弓子に聞かせている“好きな曲”、『春の祭典』。
原曲のクラシックのほうから、wikiの引用も含め、ざっと説明しますと…

『春の祭典』(原仏:Le sacre du printemps  英:The rite of spring) は、ロシアの作曲家イーゴル・ストラヴィンスキー(露:И́горь Фёдорович Страви́нский 英:Igor Fyodorovitch Stravinsky)(1882-1971)によって1913年に作られたバレエ音楽です。

(バレエ『春の祭典』は、同じくロシア人の天才ダンサー、ヴァーツラフ・ニジンスキーが関わったことでも有名な作品です。
 ニジンスキーがメインのお話ですが、山岸凉子さんの漫画 『牧神の午後』にて、このあたりのとても興味深い話が読めます。 )

テーマは春を迎えたある2つの村同士の対立とその終息、大地の礼賛と太陽神イアリロの怒り、そしてイアリロへの生贄として一人の乙女が選ばれ、生贄の踊りを踊った末に息絶え、長老たちによって神に捧げられる…という内容で、キリスト教化される以前のロシアの原始宗教の世界観が根底にあるとされています。


この音楽は、“複雑な変拍子、多声音楽、不協和音”(←ここ、覚えておいてください)でとても有名で、1913年の初演時にはの破天荒な曲調に、シャンゼリゼ劇場に集まっていた聴衆が混乱し、怒り、オーケストラをののしり…と、舞台の上のダンサーに演奏が聞こえないほどの大変な騒ぎになったそうです。

私は飯森範親氏指揮 モスクワ放送交響楽団によるCDを持ってます。
ダイナミックで壮大なんですが、不協和音のせいでしょうか、私は聞いていると、あんまりよくない感じに心拍数が上がります。精神状態がいまいちなときには聞けないな、という感じです。

 

さて、実際に中島が病室でかけているのは、ジャズではよくみられるクラシック曲のジャズ・アレンジ、ヒューバート・ローズ(Hubert Laws)(1939-)のアルバム『The Rite of Spring』であろうと思われます。

“aw”の発音は[ɔː]なのに、ヒューバート・ローズは一般にはなぜかロウズと書かれることが多いのですが、ここではDDSにも倣い、ローズと表記します。

彼はアメリカ合衆国テキサスはヒューストン出身のジャズ・ミュージシャンで、2013年現在も現役の73歳。
初期はピアノ、メロフォーン、アルトサックスなど演奏していたようですが、現在はフルート、ピッコロ担当として紹介されます。

『The Rite of Spring』はクラシック曲のジャズ・アレンジ5曲をまとめたアルバムで、1971年にレコードが、1984年にCDが発売、その後廃盤となり、2006年に再発売、2009年にリマスタリング版が発売されています。

ちなみにアルバムの構成は以下の通り。
 1. パヴァーヌ 
 2. 春の祭典 
 3. パンの笛 
 4. ブランデンブルク協奏曲第3番第1楽章 
 5. ブランデンブルク協奏曲第3番第2楽章 

2曲目だけなんですね。『春の祭典』は。
原曲は2部構成で、前述の飯森指揮版では34分(意外と短いな…)で、ローズのアレンジは9分となっています。

DDS内で『フルートの荘重な調べが…』と表現されているところは、原曲第1部の1『序奏』のファゴット演奏のイントロを、アレンジ曲イントロでローズがフルート演奏したもの指しているようです。
(ちなみに、私は、たった今この原稿を書いていてふと調べるまで、「荘重」を「そうじゅう」と読んでしまっていました。ふと調べてみると「そうちょう」だったんですね…orz。)

このアルバム、2曲目が『春の祭典』に当たるので、中島はわざわざ1曲目を飛ばしてこの曲を選んでかけているようです。
そんなにこの曲が好きなのか中島。

西谷先生もおそらくお好きなこのアルバム。
17歳でこれを好きだとは、中島、若いのになかなか渋い男です。
きっとお父さんがジャズが好きで、その影響を受けたものと思われます。ロサンゼルスに単身赴任できるくらいなので、英語も堪能そうですしね。ロックといい、洋楽趣味なのはお父さんの影響が強そうです。
作品中では思春期ということもあったのか、父親とは疎遠な感じだったのですが、影響は大きく受けていそうですね。

計算上、DDSはおそらく1988年の話なので、1984年に出たCDを買ったのでしょう。中島は入院してからフィード教授の好意に甘えて、オーディオ・セットやらいろんなCDやら買ってそうです。

…しかし中島よ、いくらこの曲が好きでも、なぜ入院中の女の子に、わざわざ不協和音を聞かせるかな…?

これ、とてもいいアルバムなんですよ。ええ。私は大好きです。
でもね、中島君、1曲目もなんか悲しい曲調だし、2曲目は20世紀初頭最大の革命的不協和音だしイントロからして暗いし、3曲目も冒頭からなんか不穏だし、んー、せめて明るめな4、5曲目のブランデンブルグあたりにしたほうが良かったんじゃないかなー、なんて思ったわけですよ。明るいしさ。

つーかどうせならもっとライトでムーディなジャズでもかけてやれよ! つ◎
うーん、9月なんだから、September In The Rain とか Autumn Leaves とかさぁ!
君は嫌いかもしんないけど、ライトでイージーなやつとかさぁ!

案の定、弓子、
「(朱実くんの顔をもう一度見たいけど)もう無理なのね…」
って暗くなっちゃったでしょ。あーあ。

え? …ああ、ちうするための作戦だったんですかそうですか。
君、キス魔ですもんね。
余計なお世話でしたねっ。