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「おかえりなさい」

弓子の声が、別室でフィードとの国際電話を終えて病室に戻った中島を迎えた。

「…? 中島くん…?」

返事もなく、続くはずの足音もないせいで不安そうに問われて、中島は扉に手をかけたまま固まっていた自分に気付いた。

「…ん、ああ……」

乾いた喉を無理に鳴らして妙な返事をしてしまう。それでも、目に見えて弓子の肩から力が抜けてゆくのがわかり、中島はふいに息苦しさに襲われた。
薄く開いた彼女の唇。笑んだわけでもないのに胸が熱い。
その熱に圧されるようにして真っ直ぐにベッドへと歩き片膝で乗り上げると、小首をかしげるようにして音と気配を追う弓子が体をこちらへ向けようとする動きを遮るようにして、その背を抱きしめた。
普段ならば見えない彼女を驚かせないよう、手を取り、腕を撫でるようにして触れているのだが、そんな手順は思い出しもしなかった。

胸も喉も突然湧きだした熱で圧し潰されそうで、とにかく急いていた。溺れる者が水面に出ようともがくような切実さだった。

弓子の手が、そっと中島の手に触れた。
その瞬間、熱が閉じたまぶたの裏に満ちた。
どうしてなのか、彼自身も分からなかった。
感じていたのは恥ずかしさよりも混乱で、それを悟られまいと彼女の肩口に顔を埋めたが、その髪の香りがますます中島の胸を締め付けた。

「……ただいま…」

吐息と共にこぼれた唇に馴染まぬ言葉は、しかし弓子にとってはごく当たり前のものなのだろう、「今何時?」と無邪気に尋ねてくる。
それがたまらなくて、回した腕に更に力を込めると、中島は無言のまま彼女の首筋に額を擦りつけた。





2017.1.29 m

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